求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年04月26日
最終更新日:2024年04月26日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第471話「敬老会」

第471話「敬老会」

祖父が分厚い老眼鏡をかけ、気難しい顔をして何やら書き物をしている。
僕は机の上にある書きかけの用紙を覗き込むと、祖父は老眼鏡を外し、目をしょぼつかせながら言った。
「来週、町内の敬老会があるんだけど、その時の締めの挨拶を頼まれてな」
「それって田中さんがやってたんじゃなかったっけ?」
「死んだんだ。去年の春に」まるで近所の犬か猫が死んだ様な口振りで祖父はさらりと言った。
祖父の年代にもなると、死は日常生活の中のどこにでも存在している為、特別意識しなくなるものなのかも知れない。
「えっ?そうなの?そう言えば、今の会長は誰なの?」
「五十嵐の爺さんだ」
「うそ、五十嵐さんの爺ちゃんってまだ生きてるんだ。凄いね。何歳なの?」
「数えで九十八って言ってたな」
「まだ、自力で歩けるの?」
「昨日、ちゃんと歩いて家に来てったぞ。車で来ようと思ったけど、天気が良いから歩いて来たって。俺でもさすがに車の運転はしないのに。まあ、近いからな」
「車じゃ近いけど、歩いたら一キロ以上あるよね」
「ちょうど二キロだと」
「凄いね。往復四キロだよ。俺がもしその年なら絶対無理だろうな」
「最近の年寄りはみんな元気だぞ」と笑う祖父。
「締めはやっぱり景気良く三本締めが良いよな」
「そうだね、よく三本締めとか一本締めとかやるよね」
「一本より三本の方が良い」と言いながら祖父は両の掌を上に向けると「それではお手を拝借。いよ~」と掛け声を上げると手拍子を打ちだした。(パンパンパン。パンパンパン。パンパンパン・・・・)よっ!と掛け声のところで、手拍子のリズムが何か違う事に僕は気付いた。だが祖父は全く気付かず、さらに続ける。三回続け、終わったところで祖父が言った。
「何か変でないか?」
その言葉を聞いて、僕は笑いながら言った。
「そりゃそうだよ。だって三本締めじゃないもん」
「えっ?じゃ、何だ?」
「三三七拍子だよそれ」

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態