退社間際に羽賀の携帯が鳴った。
「ああ、今出るところだよ。うん、へ～っ、あいつらも来るのか。久し振りだな会うの。そうだな、マコトの結婚式以来かな」携帯を耳にしながら羽
賀はパソコンの電源を落とした。
「マジ？まだあいつら一緒に住んでるの？もう十五年ぐらい経つよな。結婚とかはしないのかな。そうだよな、どう考えても普通じゃないよ。だから
さ、そういう事言うなって、思わず変な想像しちゃったじゃないか」と上着を着ながら笑う羽賀。
「会社から近いんで歩いて行くよ。そうだな二十分位かな」羽賀は携帯を切ると、上着のポケットに仕舞った。
「飲み会っすか？」山本が残業中の手を休めて羽賀に訊いた。
「ああ、高校の時の友達と一緒に飲むんだ」
「クラス会っすか？」
「そんな大げさなもんじゃないんだけどさ、でもミニクラス会って感じかな」
「へ～っ、楽しそうっすね」
「そうなんだよ。十人ぐらい集まるみたいだからさ」
「今日会う中に十五年も一緒に暮らしてる人が居るんすか？」
「そうなんだ。十五年って凄くないか？普通じゃないよな」と驚いた顔で話す羽賀。
「さっさと結婚しちゃえばいいのに」と山本。
「きっとお互い、今のままが楽なんだろうな」
「子どもとかは欲しくないんすかね」
「将来どうしようとか、計画性も無いんだよ。今が良ければそれで良いって考えさ。だからずるずると十五年も経っちまったんだろう」
「僕にはちょっと考えられないっすね」
「俺もだな。早く別々に暮らしてお互いの人生を歩めばいいのにな」
「でも、一緒に住んでるって事は、お互い嫌いなわけじゃないんっすよね」
「そりゃそうだろう」
「でも、結婚するほど好きじゃないって事っすかね」
「・・・・・結婚って二人がくっつくって事か？」
「ええ、勿論っすよ」
「そりゃ無理だ」
「どうしてっすか？」
「だって男同士だもん」