会社での昼休み。山本は出前で取った大好きなラーメンを食べ終えると、何やらスマホをいじり始めた。
羽賀と女子社員も同じ様にスマホを操作している。
「みんなして何なんだ？」加藤が不思議そうに言った。
「知らないんすか？今日はポケモンがダウンロードできる日なんすよ」と山本。
「ああ、今話題というか問題になってるゲームか、俺のもできるのか？」
「ガラ携じゃ無理っすよ」
その時、スマホを見ながら女子社員が言った。
「会社にもモンスターがいますよ」加藤が女子社員のスマホを覗き込む。
「このモンスターにカプセルを投げて当たると」女子社員は加藤に説明しながら画面の下から上に向けて人差し指をシュっと動かす。
「モンスターを捕まえてコレクションするってわけか」
「そうです。他にも捕まえたモンスターを戦わせたりもできるらしいんです」
「ふ～ん。何でこんなのに大人が夢中になるのかね」
ゲームを楽しむ二人をしり目に、羽賀は上手くダウンロードできない様だ。羽賀がスマホの画面を見ながら山本に声を掛ける。
「俺の動かないんだ。一回削除して入れ直したんだけど、何でだろ」そんな羽賀のスマホを山本が覗き込む。
「あら？画面が違いますね。あっ、ゲームのタイトルが違うじゃないっすか！ポケモンGOのGOが二つ多いっすよ」と笑う。
「あ～っ！本当だ！これって偽物なのか？」
「騙される人が多いみたいですよ。それって偽物らしいです」と女子社員。
「お前らしいな。どうせ、よく確認しなかったんだろ」と加藤が大笑いする。
「悪かったな！確認不足で」と後ろの方で声がしたので驚いて加藤が振り向くと、そこには部長が立っていた。
「部長のことじゃないですよ。ああ、ちょうど良かった。ちょっと言ってやって下さいよ、こいつらいい歳こいてポケモンなんか・・」
とまで言い掛けたところで加藤が固まる。
「あら、部長まさか・・・」
スマホを手にした部長は悲し気な顔で言った。
「俺のも動かないんだ」