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最終更新日:2024年04月26日
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第501話「膨らむ夢」

テーブルに広げた新聞の上に分厚い老眼鏡を置くと、祖父は大きな溜息をついた。
「今年もダメだったか。だけど、間違いなく何処かで誰かが当たってるんだよな」
「意外と近くにいたりして」と言う僕に、なぜか祖父は囁く様に小さな声で話す。
「近所の田中の婆さんの家、去年豪邸を建てたろ、それに車二台も入れ替えた上に、一家揃ってハワイで年越しだってよ。あやしいべ?」
「田中さんとこが宝くじ当たったってこと?」
「あのケチの婆さんが変だとは思わんか?」
「家を建てる為に今まで節約してたからじゃないの?」
「いや、俺はそうは思わんぞ。ありゃ絶対当たったな」
「まあ、仮に当たってたとしても家には関係ないし」
「もし俺が十億当たったら、隣近所に一千万ずつ配るな」
「隣近所って何軒ぐらい?」
「そうだな、十軒ってとこだな。それだって一億だ。後は世界一周旅行して、お前らにも一千万ずつやるよ」
「赤の他人と俺たちが同じ金額って、どう考えても変だろう」父が口をはさむ。
「じゃあ、お前ら三人に一億やるから仲良く分けれ。俺の世界一周旅行には、豪華に一億は使いたいもんだな。残り七億は寄付だ」
「ダメだ、六億九千万を俺ら三人で分けて一千万を寄付だ」と父。
「相変わらずお前はがめついな」と祖父は呆れた顔で父を見つめている。
「だけど、隣近所に配るって変じゃないか?金持ちの家も結構あるのに」と僕が祖父に疑問をぶつけた。
「爺さんは良い振りこきだから見栄張りたいんだよ」
「何だと、俺はだな・・・」
また二人がもめだしそうなので、僕が案を出す。
「そうだ、この家をぶっ壊して新しく立て直そう。向かいの空き地も買って庭も大きくしてさ、そして墓も
もっと立派にするんだ」
「おお、墓な、お前は優しいな、俺の為にちゃんと考えてくれるんだな」と祖父。
「さっきから馬鹿な事ばっかり言ってないでそこ方付けなさい」と母が怒鳴る。
「どうせ当たったの三百円でしょ?」母の言葉に僕ら三人は無言で頷いた。

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