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最終更新日:2024年04月26日
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第551話「魔法の足」

玄関の方から小さな足音がドドドドッと近づいてきてドアを開けた。
隣りの家の孫、四歳児の健太が遊びに来た。
「あけましておめでとう!」
「おお、おめでとう」祖父が嬉しそうに健太を見た。
だが、健太はなぜか少し不服そうな顔をして、もう一度ドアから出ると、再びドアを開けて叫んだ。
「あけましておめでとう!」
「何だお前、何回言うんだ」
ドアを開けたから、あけましてという事なんだろうが、
「無理無理、爺ちゃんには通じないって」と僕が笑う。
「爺ちゃんは鈍いな」と健太は祖父の横に座った。
「正月は、どこか連れて行ってもらったのか?」と祖父は訊く。
「どこも混んでるから、行っても面白くないって」
「そうだな、道も悪いし、正月は家でゆっくりしてるのが一番かも知れんな」
「でも俺は子どもだから、遊びたいさかりなんだ」
「そっか、遊びたいさかりなのか」と笑いながら健太の頭をなでる祖父。
「爺ちゃんは元気だった?」
「うん、元気だ。でも少し腰が痛いかな」
「また踏んでやろうか?」
「おお、頼めるか」
「いいよ、寝て」と健太はいつもの様に言うと、うつ伏せになった祖父の腰の上に乗った。
僕も子どもの頃、よく祖父の腰の上に乗ったものだ。
軽く足踏みをする健太に祖父が言う。
「ああ気持ち良いな、重さもちょうど良いあんばいだ。健太の足は魔法の足だな」
「そっか、俺の足は魔法の足か」と嬉しそうな健太。
二日酔いで頭が痛いと言っていた父は、薬箱から頭痛薬を取り出すと、健太を見て笑いながら言った。
「おっ、来て早々に腰もみとは御苦労だな」
「うん、爺ちゃん気持ち良いって、おじさんは頭が痛いの?」
「うん、夕べ飲み過ぎてな」
「頭のどの辺が痛い?」
「う~ん、後ろだな、この辺かな?」と言って父は掌で後頭部の辺りをさすった。
それを聞いた健太は、祖父の上で足踏みをしながら言った。
「じゃ、そこに寝て、次はおじさんの番ね。俺が踏むとすぐ治るよ。俺の足は魔法の足なんだ」

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