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最終更新日:2024年04月26日
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第558話「社会貢献?」

会社帰りに時々寄る本屋が移転した。自宅とは反対方向な上に結構遠い。
会社の近くにも本屋はあるのだが、昔から利用しているのでなかなか離れ難い。
かといって、店員ともフレンドリーな関係かというと、そうでもない。拘る理由が自分でもよく分からないのだ。
店内で本棚を整理している店員に声を掛けた。
若くて可愛らしい女性だった。
「お勧めの本ってある?」
「この辺は、人気ですよ」自分の目の前にある平積みの本を指して彼女は言った。
「この辺は、ほとんど読んだよ。あなたが面白いって思った本は何かないの?」
「私、本は読まないので」ガビ~ンである。
「えっ?読まないの?」
「はい、字ばかりの本って苦手っていうか、嫌いっていうか」ガビガビ~ン。
料理嫌いのシェフがいるか?動物嫌いの獣医がいるか?本屋には本好きの店員がいて欲しい。
「読んでみたいとは思うんですが、切っ掛けがなくて」見渡す限り本だらけの環境中、これ以上の切っ掛けが何処にあるのか。
「良ければ何か面白い本を教えてくれませんか?」どうしてこうなる?逆だろう、普通。
僕は彼女の好みを聞くと、早速売り場から1冊の本を見つけて彼女に渡した。
礼を言う彼女。違和感を覚えながらも僕は笑顔を返しつつ、数冊の本をポイントカードと一緒にレジへ。
その時初めて気が付いた。何故この本屋に拘るのか、それはポイントカードだ。
他の本屋よりも安い金額でポイントが付くのだ。自分でも驚くほどせこい理由だ。
それから2週間程経って、またその本屋へ行くと、あの時の彼女がやって来て。
「この前の本、めちゃくちゃ面白かったです。今度は感動する本が読みたいです」
「そうでしょ?読書って楽しいよね」
「はい、こんなに面白いって思いませんでした」僕は彼女の見た目からの年齢を考えて、また新しく本を紹介した。
若者の活字離れが深刻化している昨今、僕によって本好きの女性が一人誕生する。これは立派な社会貢献ではないか?この店に拘る理由、それはもうポイントではない。社会貢献なのだ。
レジに本を出す。
「ポイントカードはありますか?」と店員。
「あっ、はい」

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