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最終更新日:2024年04月26日
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第574話「律子さん78」

猫舌の母は、すっかり冷めきったお茶を満足そうな顔で一口飲むと言った。
「山田さんのお婆ちゃん、あんた知ってるでしょ?」
「うん、子供の頃によくお菓子もらったりしてたよ」
「先月、亡くなったのよ」
「えっ?あのお婆ちゃんっていくつだったの?」
「百歳だって」
「へえ~っ一世紀か、凄いな。大往生だよね」
「それがさ、結構な財産持ちだったらしいの。旦那さんが亡くなる前に山やら畑やら売ってお金に換えていたらしくてね」
「確か娘さんがいたよね」
「そう、三人いてね、札幌に一人と東京と大阪に一人ずついるらしいんだけど、その事を知ってたのは、札幌の娘だけで他の二人は知らなかったんだってさ」
「でも三人で分ける事になるんだよね」
「それがさ、財産は札幌に住む娘に全額渡すって遺言を書いてたんだよ」
「よっぽどだね、二人の娘との間に何があったのか、そっちの方が興味あるな。じゃさ、一旦一人が全額もらってから三人で仲良く分けるのはダメなのかな?」
「そうはならないから大騒ぎしてるんだよ。骨肉の争いってやつ、テレビなら殺人事件が起きて金田一耕助が出て来るパターンだよ」
「金田一耕助って、ちょっと古過ぎじゃないの?」と言って私が笑う。
「でもさ、下手に財産なんか持ってると色々と大変だよね。家みたいに何もない方が良いのかもね」
「あら、あんたが知らないだけで、とんでもないお宝があるかもよ」と意味有り気に顔をほころばせる母。
「ないない、ぜ~ったいない」と私がかぶりを振る。
「実はね、江戸時代の初期に描かれた有名な絵描きの掛け軸が二本あるんだよ」
「またまた~ご冗談を~」と言いつつも、私の顔が少しだけ引きつる。
「本当だって、それこそ先祖代々の物でさ、一度鑑定してもらおうかって、お父さんと話てたんだから」
漫画であれば、私の両目は間違いなく¥マークに変わっているだろう。
「で、で、その事ってお兄ちゃんは知ってるの?」

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