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最終更新日:2024年04月26日
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第584話「あいさつ」

今日も裏の家の孫である四歳児の健太が「おはよう」の声と共にやって来た。
「おっ、おはよう」と祖父が新聞をたたみながら笑う。
「源じいの彼女が来たから俺は邪魔かと思って」と、なぜか健太は声を潜める。
「お前んとこの爺さん彼女がいるのか?」と笑う祖父。
「うん、美人のおばさん」祖父は僕の方を見ながら、
「誰のことだ?」と笑う。
「結婚するかも知れないな」と意味有り気に笑う健太の顔がおかしくて、祖父と僕が笑う。
「だって、結婚式のことで来たって」頭を捻る祖父だったが、我慢できなくなったのか、僕に様子を見て来る様に言った。
僕が裏の家から戻り、粗方の事情を説明した。
「知り合いの息子が結婚するんで、挨拶を頼まれたらしいよ。式場の担当者が打ち合せに来てた」
「で、受けるのか?」
「最初は受けたらしいけど、息子の事はよく知らないからやっぱりやめるって」
「歳を取ったら、面倒な事はしたくなくなるもんだ」
「俺は、保育園の爺ちゃん先生にもおはようございますって言うもん」と健太。
「保育園には爺ちゃんの先生が居るのか?」と祖父。
「うん、こーんな長い髭生やしてる」健太は、祖父が見ていた新聞紙を顎の下で円錐状に丸めて言った。
「園長のことだよ。髭の園長っていわれてるぐらいだから」僕が祖父に説明した。
「源じいは俺に挨拶はちゃんとしなきゃダメだって言うのにな」と怒る健太。
「いや、その挨拶じゃないんだ。何て説明したらいいんだおい」と僕に振る祖父。
「みんながいる前で、お話しをしたりすることを言うんだ」と僕が説明するが、
「俺は挨拶が元気だから先生にみんなの前で挨拶してみてって言われて挨拶して、みんなが拍手したんだ」
「あっ、仮面ライダーの時間だ」僕が突然話を変えると、慌ててテレビの電源を入れる健太。
子供相手に面倒な事は誤魔化す。最近僕が覚えた手口だが、後味が悪いのも確かで、そのせいか、目を輝かせて画面に見入る健太の横顔がとても眩しく感じた。

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