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最終更新日:2024年04月26日
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第620話「三文の徳」

隣りの家の孫である四歳児の健太がやって来た。
「あれっ、今日はまた随分と早いな」と祖父が驚く。
「今日は早番なんだ」
「そっか、だから早いのか」
健太の母親はシングルマザーで、保育所が休みの日には、我が家の隣りに住む父親の所に健太を預けている。それ以来ちょくちょく遊びに来る様になった。
「早起きは三文の徳っていってな、今日は何か良い事があるかも知れんぞ」
「シャンモンって?」 四歳にしては口が達者だと思うのだが、中には苦手な言葉もあり、三もその一つでシャンになってしまう。
「三文は、昔のお金だ」
「ふ~ん、そっか・・・誰がシャンモンくれるんだ?」
「そうだな~誰かな~」と上着を着ながら笑う祖父。
「いっぱいのお金?」
「いや、少しだな。今でいえば三十円くらいかな」と祖父は適当に現在の貨幣価値に換算する。
「シャン十円か、俺が今持ってるのは・・・」と言って、健太は背負って来たリュックを開けると、ドラえもんの財布から小銭をたくさん取り出してテーブルの上に並べ始めた。母親が何かあった時の為に持たせている小銭だが、今まで使わせた事はない。
「おお~いっぱいあるな、この茶色いお金が十円だ」
「うん、知ってる。い~ちに~い、シャ~ン、し~い、ご~お、ろ~く。六あった」
「そうだ、六十円だな、これが三つで三文ぐらいだ」
「ふ~ん、これでちっちゃいチョコ買ったことある」
「そっか駄菓子を買ったか」
「ダガシ?ダガシって?」
祖父は面倒になった様で、すぐに話題を変えた。
「例え少なくても毎日早起きすれば、大きなお金になるって事だ。よし行くぞ」
祖父は、いい加減な解釈を伝えてから健太の手を繋ぐと、祖父の日課である早朝の散歩へと向かった。
暫く歩き、祖父は健太の様子がおかしな事に気付く。
「お前、何ですれ違う人の顔ばかり見るんだ?」
「早起きしたから誰かくれるかな~と思って」
「くれる?何をだ?」
「シャンモン」

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