第716「子どもって正直」
隣りの隣りの家の源造さんの孫で四歳児の健太が遊びに来ていた。
今日は少し涼しいのに動き回るから随分と暑そうだ。
そんな健太を見て祖父が僕に言った。
「すまんがキャンデ買って来てくれんか」祖父が言うキャンデとはアイスの事だ。
僕は祖父からお金を渡されると、健太と一緒に近くのコンビニへと向かった。
その途中、向こうから近所のおばさんが歩いて来た。
「あら、源造さんとこの健太君だっけ?」健太が頷く。
「おばさんはどうしていつも顔に鼻くそ付けてるの?」僕の脇の下から変な汗がどっと流れ出て来た。
「ああ、これ?これはホクロだよ。鼻くそに見える?」おばさんは鼻の下にあるホクロを指差して笑った。
「うん、鼻くそだと思った」
「おばさん、子供の頃に鼻くそ女っていじめられた事があったんだよ」と少し悲しそうな顔のおばさん。
「う~ん、そっか、あっ!俺もホクロある」と言った瞬間、健太は半ズボンとパンツをいっぺんに降ろした。
「あら!」と驚くおばさん。
「俺もほら、ここにホクロ、ほらほら、玉の横っちょ」
おばさんはしゃがみ込んでホクロを確認する。
「あら、小さなホクロがあるね~」と大笑いする。
「俺とおばさんは鼻くそ仲間だな」と健太は笑った。
コンビニから戻り、祖父にホクロの事を話す。
「どうして腕にあるのを見せなかったんだ?」と祖父。
「おばさん悲しそうな顔してたから、チンチンの方が面白いかなって思って」
「そっか、お前は優しいんだな」と頭を撫でる祖父。
間もなく昼時になった。今日は母が居ないので、昼食は近くのラーメン屋へ行く事になっていた。
店内に入り、健太が少し沈黙するのを見て、何だか嫌な予感がした。
間もなく予感は的中、子供用のラーメンを食べながら健太は大声で僕に言った。
「ここのラーメン美味しいな。だけど何でお店はボロボロなんだ?」また僕の脇の下から変な汗が・・・