第717「マーちゃん76」
友達の家に行くと、友達の息子で小学五年生のマーちゃんが、タブレットで何かを見ていた。
「おっ、買ったんだ」と僕。
「はい、ちょっとした調べものをするのに便利です」
「で、何を見てたんだ?」
「クックパッドでお料理の勉強をしていました」父子家庭のこの家は、家事全般をマーちゃんがしている。
「ゲームとかアニメは?」
「無料のアニメは時々見てますよ」子供らしい一面を見つけ、少しほっとする。
「テレビを見なくなったので、今月は電気代も減ったんじゃないかと思います」
「そんな事も考えてるんだ」
「はい、家には浪費家が一人居るものですから」父親である僕の友達の事だ。
「その浪費家は、今日は居ないみたいだけど」僕は部屋を見渡してそう言った。
「用事があるとかでお友達の所に行きましたけど、もう帰って来なくて良いです」
また親子喧嘩か?僕は何気に話題を変えた。
「マーちゃんは友達と遊んだりしないの?」
「はい、こういった時代ですし、親同士がお互いに気を使ってしまう様なので、極力控える事にしています」
「自由に友達と遊べないって、難儀なご時世だよな」
その時、父親である友達が帰って来て言った。
「友達に相談したら、あの株は買い・・・何だ来てたのか」と僕を見て驚く友達。
「お前、株買うの?」と僕。
「うん、資産運用をしようと」とまで友達が言い掛けた時、マーちゃんが言った。
「家には運用する資産なんてありませんよ、例え配当が良くても数パーセントの配当で、お父さんが満足できるはずないでしょう。
結局は売買して損して借金して、最後は破産です」
自分の親の事をよく理解しているマーちゃんの意見に僕も全面的に同意できた。
「やっぱ、そう思うか?」
「思いますよ、自分でも良く分ってるじゃないですか」
「そうだな、株はやめとこう。よし、風呂入って来る」
「え~っ!随分と物分かりが良過ぎないか?」と僕。
「大丈夫ですよ、お財布は僕が握ってますし、投資は僕の将来にしてもらいます」