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最終更新日:2025年04月30日
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第718「男の意地」

会社帰りに、近くのスーパーに立ち寄った。
惣菜コーナーに行くも、時間が遅かったせいか棚には半額の札が付いた品が申し訳程度にパラパラと残っているだけだった。
「あれ奥さんは?」といきなり後ろから声を掛けられたので少し驚いた。
聞き覚えのある声に振り向くと、Aが空の買い物かごをぶらぶらと揺らしながら立っていた。
「悪い悪い、別に驚かす気は無かったんだけどさ、どした?今日は独身か?」
「まあな、ちょっと実家に戻ってるんだ」
「あっ、お前も?喧嘩か?」
「お前と一緒にすんな!」
「何だ違うのか~仲間が居たと思ったのに残念」
「何だよ、奥さん実家から戻らないのか?」
「今日で、ちょうど三日目」
「どうせ、またお前が悪いんだろ?さっさと謝っちまった方が良いぞ」
「俺にも男の意地がある」
「男の意地って今どき演歌のタイトルにもならんぞ」
「それにまだ三日目だし、独身気分を味わわなきゃな」
「何処かで聞いたな、そんなセリフ」
「・・・Bの事か?」Aは一瞬ハッとした顔をする。
「あいつも三日目でお前みたいな事言ってたっけ、そして日が経つに連れ、連絡しづらくなって一ヶ月後に離婚届が届いて本当に独身になっちゃった」
「・・・き、気が向いたら電話でもしてみるさ」と強がるAだが、動揺しているのが手に取る様に分かる。
「ただいま~」家に帰ると、妻と友達のミキちゃんがパソコンを通して楽しそうに会話をしていた。
ミキちゃんは、さっきスーパーで会ったAの奥さんで、妻とは古くからの友人だ。
「お帰り~」と笑う妻と、モニターの中から笑顔で手を振るミキちゃん。
妻が用意してくれた食事に僕の買って来た惣菜がプラス。
「本当に買って来たんだね」と妻が笑う。
「あいつ、ずっと俺にくっついてるからさ、何か買わないと変だろう」
「やっぱりあそこのスーパーに居たんだね」
「うん、あいつが独身の時は、仕事帰りにほぼ毎日あのスーパーで総菜を買ってたからさ、きっと来るだろうと思ってたんだ」
「行動パターンを掴んでるのって、さすが古くからの付き合いだよね。でどうだったの?」
「うん、まあ強がってたけど、ありゃもう時間の問題だな」
「ごめんね~面倒なこと頼んじゃって」とミキちゃんがモニターの向こうで、すまなそうに肩をすぼめながら手を合わせた。
今日、Aとスーパーで会ったのは偶然ではなく、ミキちゃんに頼まれての事だった。
ちょうどその時、ミキちゃんのスマホが鳴った。
「あら、もう?意外と早かったね」彼女はそう言ってスマホを僕らにも聞こえる様、スピーカーに切り替えると、Aの悲痛な声がパソコンを通して家中に響き渡った。
「ごめん!俺が悪かった~」

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