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最終更新日:2024年04月26日
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第413話「ソリを引く女性」

得意先へ行く途中だった。羽賀が運転をし、助手席には山本が乗っている。
「天気予報じゃ、けっこう降る様な事言ってたけど、思ったほどじゃなかったな」車に踏み締められ、ツルツルになった道路を運転しながら羽賀が言った。
その時、前方を見ている山本が妙な声を出した。
「あっ、あれれれ」と意味不明なことを言うと、急に窓を開けて大声で叫んだ。
「ちょっと~お姉さ~ん!」何事かと驚いた羽賀がブレーキを踏むと、山本が声を掛けた方を見た。
歩道に積った真新しい雪の上を赤いプラスチック製のソリを引いた若い女性が目に入った。ソリには小さな女の子が足を投げ出す様に座り、股の間には買い物袋らしき物が置いてある。
女性は自分の事じゃないと思っている様で、こちらを見る気配は全くない。
「何考えてるだよ。仕事中に」と言って羽賀は山本の頭を掌でひっぱたいた。
「いや、違うっすよ。ほら、見て下さいよ。あの子」
「何がだよ、うん?あらららら」ソリに乗ってる子供を見て今度は羽賀が言った。
子供は嬉しそうに、自分の股の間にある買い物袋から何かを取りだしては、雪の上に投げていた。
よく見ると、パックに入った魚の切り身の様な物や、野菜なんかを楽しそうに雪の上にどんどん投げている。かなりご機嫌の様だ。
羽賀は母親に知らせようとしてクラクションを鳴らすが、それも全く無視された。
「お母さん、後ろ、後ろ」と山本は叫ぶが、母親は真っ赤な顔をしながらも更に無視を続けると、ソリを引いたまま走り出し、細い路地へと消えて行った。
「どうしましょ」と山本。
「その内に気付くだろ。俺達も約束があるし、急がないとやばいぞ」
得意先との打合せも無事終えて会社に戻った二人を加藤が待ち構えていた様に怒鳴りつけた。
「お前ら、会社の看板しょった車で何やってんだ!」
「えっ?」何の事か分からず目が点になる二人。
「苦情の電話が入ったんだよ。お前ら軟派したろ!」

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