東京へ出張をした際、得意先の部長と夕食を一緒にする事になった。
約束の時間よりかなり早い時間に指定されたレストランに着いた。なかなかお洒落なレストランだった。僕が着いた席の後ろにはＯＬらしき女性が数人で話しをしている。暇だからじっとしていたら、嫌でも会話が耳に入る。
「うちの会社、もうヤバイ見たいよ」
「あんなに沢山リストラしてもダメだったんだ」社名を言ってるのを聞いて驚いた。誰もが知っている有名な会社だったからだ。
「それでね、今度の株主総会で・・・」と迄聞いたところで、得意先の部長がやって来た。
料理の注文をしたりしている内に、ＯＬ達は帰ってしまった。株主総会でどうなるのか・・・。
部長と別れ、電車に乗る。結構混雑していたが、ポツンポツンと空いた席の一つに僕が座ると、隣りの男性の会話が耳に入って来た。
「俺、絶対あいつを殺してやる」
僕はギョっとして男性の横顔を見た。二十代後半で、かなり悪っぽい。
「お前の気持ちは良く分かるけど、今度何かやったら、終わりだぞ」
「でもあいつだけは許せない！会社に乗り込んで行ってぶっ殺してやる」その会社はさっきのＯＬの会社だった。
僕は全神経を耳に集中させ男性の話しを聞いた。
「俺はもう何も怖いものは無い。今度の・・・」と迄言い掛けた時に、駅に到着し、男性二人は降りて行った。
今度の・・・何？何て言ったんだろ？知りたい。どうなるだろう？リストラしたって言ってたから、その腹いせか？でもそんな事で人を殺すなんて言うだろうか？冗談だよなきっと。でも隣りの人は真剣に止めてた様だし・・・と色々頭の中で考えながら歩いていると・・・人気の無い薄暗い路地に出た。あれ？ここどこだ？
少し歩くと交番があったので、僕はホテル迄の道のりを聞いた。
「そのホテルなら・・・・」と警官が言い掛けた時に男性が一人飛び込んで来た。
「何？喧嘩？」と言って警官は飛び出して行った。
何とも煮え切らない一日だ。