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最終更新日:2024年04月26日
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第243話 「おまけ 後編」

 お菓子は同じかも知れないが、僕はおじいちゃんが入れてくれる薄茶色の紙袋が好きだった。お菓子に薄っすらと移った紙袋の匂いも好きだったし、おじいちゃんのおまけしとくよのドキドキ感も好きだった。
「知ってるか?あのじいさんって、一回死んでるんだぞ。だからお化けなんだぞ。あんなとこ行ってたらお前も呪い殺されるぞ」
僕は家に帰ると母にその事を聞いてみた。すると母は笑いながら言った。
「あのおじいちゃんは心臓が悪くて一回心臓が止まっちゃった事があるんだって」
「心臓が止まったら死ぬんでしょ?」
「心臓が止まってもお医者さんが心臓マッサージとか人工呼吸とかいろいろな事をすれば動き出す事があるんだよ」
「お化けじゃないんだよね」
「当たり前じゃないの」
それから暫く経ったある日の事。喪服姿の母が大きな袋を抱えて家に入って来た。
「お菓子屋さんのおじいちゃんね。亡くなっちゃったのよ。それでね、死ぬ前にもうお店も閉めるから、あんたにこのお菓子を渡しといてくれって息子さんに言ったらしいの。このお菓子、あんたの為に仕入れしてたんだって。何時も、あんたみたいな孫が欲しいって言ってたみたいだよ。おじいちゃん好きだったんだね。あんたの事が」
「僕、おじいちゃんにお礼言わないと・・・」
次の日の葬儀に僕は母と一緒に出席した。祭壇にあるおじいちゃんの写真は僕が何時も見ていた怖い顔だったけど、よく見るとやっぱり目が笑っていた。
僕は祭壇に手を合わせながら小さな声で言った。
「おじいちゃん。おまけいっぱいしてくれて、ありがとう」
 僕の話しを聞きながら横に乗っている妻が言った。
「大好きなお菓子は他のお店で買う様になったの?」
「いや、食べなくなった」
「やっぱりおじいちゃんのお店のが良かったんだね」と妻。
「そうだな。あっほら、ここが昔お菓子屋さんが在った場所」と言って、僕は小さな公園の前に車を止めた。

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