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最終更新日:2024年04月26日
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第274話 「面接の日(1)」

 スーツなんて着たのは何年振りだろう。そう思いながら、私は息を止めると、少しお腹を引っ込める様にしてスカートをはいた。
今日は大切な面接日だ。絶対に遅刻は許されない。予定時間の二時間前に準備をした。服装に乱れはないかと全身を鏡に写してチェックする。そう、スーツを着るのは十五年振り。そんなブランクを感じさせないほど様になっている。やり手のOLって感じ。主人が惚れるのも無理はない。ちょっとお腹が苦しいけど。普段着と違い、スーツを着ると身も心も引き締まった感じがする。背筋を伸ばし、軽く部屋の中をウォーキングする。二、三歩歩いた瞬間何かをふんずけた。足首が不自然に外側に傾いたところに全体重がのしかかる。
グキッっていう感じと共に足首に激痛が・・・。
面接前の大切な私の身体に何が起こったのか・・・。
足元には主人のゴルフボールが落ちていた。クソ亭主と思いつつ足首をかばいながら前かがみになってボールを拾おうとした時、ギシィーという音と共にスカートが破れた。全身の血の気が引く思いだった。
今の私に合うスーツはこれ一枚しかないのだ。それもやっと。足首が痛いのも忘れ、私はスカートだけ脱ぐと、大きく裂けたスカートを縫う為、ミシンを出した。鏡に映る私の姿は、上半身スーツで下半身はストッキング、下腹はポコンと出て中年そのものの姿が写っていた。先ほどの姿と比べると、余りにものギャップに思わずふき出してしまうが、今はそんなところではない。時計を見ると一時間三十前。久し振りのミシンでの作業は時間が掛かると思いきや、僅か十分程で終了した。さすが私、仕事が早い。昔、よく上司にもそう言われたっけ。
出来上がったスカートをはこうとしたが、右足のくるぶし辺りが腫れていて激痛が走る。半年ほど前に主人が腰痛で病院に行った時に貰った湿布薬の残りが何枚かあったので足首に貼り、軽く包帯を巻いた。時計を見ると面接迄あと一時間。

つづく

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