僕が札幌支店に初めて出張した頃、理恵ちゃんと言う女子社員が居た。
仕事中も絶えず何かを食べていて、会社の冷蔵庫は、殆ど理恵ちゃんのおやつで一杯になっていた。給料の大半は冷蔵庫の中へ消えるとの事。
昼食時になり、理恵ちゃんは鞄から大きな弁当箱を取り出し、満面の笑みを浮かべて包みを解いた。
「じゅ、重箱！かい」思わず僕は叫んだ。それも二段重ね。しかし次の瞬間、理恵ちゃんは今にも泣き出しそうに叫んだ。
「一段足りな～い。お母さんのバカ～」それを見た支店長が「おっ、今日はフルーツ用のお重が一段足りないな」
荒れる理恵ちゃんを尻目に、僕ら他の社員は近くのレストランへ。
食後会社に戻ると、三角形に切った一口大のスイカが各机の上に置いてあった。
我慢出来ずに近くのスーパーから買って来た様だ。
スイカを食べ終わり、皮を捨てに流し台に行くと、洗面器の様に大きな皿がドンと置いてあった。
その時、支店長がやって来て小声で言った。
「その皿に何が入ってたか分かるか？」
「いいえ」と僕が言うと支店長はゴミ箱の方を見ながら、顎をクイッと突き上げた。
そこには、ヘルメットの様に中身がくり抜かれたスイカの皮が捨ててあった。
「凄いですね。一人で半分食べたんですね」
「いや、よく見ろ。三分の二だろ」