九月も半ばだと言うのに、季節外れのこの暑さ。女子社員が窓を空けると、いきなり白い物体が社内に飛び込んで来た。
「ゲゲーッ！！」女子社員が奇声を上げた。
何事かと女子社員の方を見ると、白いセキセイインコが床を歩いていた。目が悪い女子社員は更に叫んだ。
「ゲゲーッ」社内は大爆笑。
「大丈夫だって。鳥だよ鳥。何処かから脱走して来たんだ。それにしても、普通、若い娘ってキャ～っとか言わないか？ゲゲーッて何だよ」加藤が言った。
「わ～っ可愛い。インコですね」と言って女子社員がしゃがみ込んで手を出すと掌に乗って来た。
「ふん！可愛い声出したって今更遅いわ！」と羽賀。
「ぴっこちゃん！おはよ」女子社員の指に止まり、喉下を膨らませながらインコがしゃべた。
「これだけ慣れていたら飼い主も悲しんでるでしょうね」と山本。
何とか飼い主を探そうという事で、きゅうじんくんの掲示板に載せる事にした。その時ぴっこがまたしゃべった。
「スズキ○子。０３・・」
「おっ！飼い主の名前と電話番号を言ったぞ。でも、０３って東京？」と加藤。
東京から飛んで来る訳が無いと思いながら、山本がぴっこが言った番号に電話をすると、年輩の男性が出た。鈴木では無かったが、一応白いインコの事を聞いてみると、鈴木というのは帯広に住んでいる妹さんだと分かった。
連絡先を聞き、電話すると、直ぐに鈴木さんが飛んで来た。気になるのは何故お兄さんの電話番号を言ったかだった。その訳を加藤が聞いた。
それは、まだ息子さんが小学生の時、一人で東京の叔父さんの家に遊びに行かせる際、迷子にならない様に電話番号だけは暗記させたらしく、その時にぴっこも一緒に憶えたのだそうだ。
飼い主が持参した籠にぴっこを入れると、女子社員がぴっこに話し掛けた。
「ぴっこちゃん良かったね」
その時ぴっこが叫んだ。
「ゲゲーッ！ゲゲーッ！」