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最終更新日:2024年04月26日
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第292話 「律子さん6」

 私は朝五時に起きると、主人と私のお弁当を作った後、ランニングに出掛けた。春とはいえ、吐く息も白い。でも、走っているうちに体が温まり、ちょうど良い気温に感じて来る。その時、向こうから見慣れた顔の女性が走って来た。
「何で?何でこんな所に居るのよ!」
それは、田中好子だった。私がダイエットの為に走っている事を人に知られてはまずい。努力をしているところを人に見せるのは私の主義に反する。例えていうなら、私にとってそれは、野グソしてるところを人に見られた様なもの。人知れず努力する事こそが美しい。優雅に泳ぐ白鳥が水の中では必死に足をばたつかせている様に。そう、私は白鳥じゃなきゃだめなの。ああ、せめて帽子でも被って来れば良かった。そんな私の気持ちをよそに彼女は、どんどん近づいて来る。どうしよう・・。
あっそうだ、健康の為って言えば良いのよ。主人にも言った様に、何だそれで良いのよ。そうとなったら毅然とした態度でいなきゃ。
私は、うつ向き加減から顔を上げると、堂々と胸を張った。五メートル三メートルと彼女は近づいて来る。そして私の目の前に来ると、無表情な顔で会釈をした。私が笑みを浮かべ、話し掛けようとしたが、彼女は私には眼もくれず私の横を走り抜けて行った。えっ?無視?私を無視した。どういう事なの?
家に帰ると、朝起きて間もない主人にこの事を伝えた。
「無視よ、無視。考えられる?こんな事!ちゃんと目と目が合ったのに無視よ。きっとあの子、自分が走ってるとこを人に見られたくなかったのよ。だから私の事を無視したんだわ」
何だか私の事の様。
「それにああいう八方美人的な子って、意外と性格悪いのよ。いい歳こいて、ぶりっ子見たいなところもあるし」私は少しむきになって捲くし立てる様に言った。
すると主人は、私の顔をじっと見て、腹が立つ程冷静沈着な態度で言った。
「分からなかったんじゃないかな。化粧してないから」
「あっ!・・・」

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