仕事が終わると私達は会社近くにある行きつけの居酒屋へと足を運んだ。
田中好子と小林幸子、男性社員一名と私の計四人。
「今日は課長も誘ったんだけど、最近は残業が多かったんで早目に帰りたいとか言っちゃってさ」とメニュー表を見ながら私が言った。
「課長はダメですよ。ケチだから。私達だけだと驕らなきゃならないと思ってそりゃ来ませんよ」と田中好子が言う。
それを聞いて笑う若い男性社員の隣りに居る小林幸子が言った。
「でも山田達也っておしいよね。山口達也と一字違いだもんね。もう少しで私達の有名人同姓同名の会に入会できたのに」
「あら、そんな会いつできたの？」と私。
「今作った」と言って頬の肉をぷるぷるさせて笑う小林亜星似の小林幸子。
「山田君って芸能人で誰が好きなの？」と田中好子。
「岡田奈々ですかね」
「プッ、あんた随分と渋いとこついて来るじゃない」ビールを吹き出しそうになった小林幸子が笑いながら言った。私も同じく笑う。
「あの心細そうな顔が何とも言えないんですよ」
「うんうん、分かる様な気がする。そういう顔を時々するもんね」と私。
「人気あるし可愛いもんね。なぁちゃん」と田中好子。
「なぁちゃん？そんな呼び名あったっけ？」と小林幸子を見て言う私。
「若い子にも人気があるって事は再ブレークでもしてるのかな？でも、もういい歳だよね？」と小林幸子。
「それって誰かと勘違いしてませんか？」と田中好子。
「岡田奈々って女優でしょ、『俺達の旅』で田中健の妹役してた」と小林幸子。
「ポッキーのＣＭにも出てたよね」と私が思わず付け加えると、そうそうと言って興奮する小林幸子。
「それ岡田奈々と違いますよね」と言って笑う山田。
「そうよ。岡田奈々よ」と自信たっぷりに胸を張って言う小林幸子と私に田中好子がとどめを刺す。
「ＡＫＢのメンバーですよ」
それを聞いて小林幸子と私は同時に言った。
「えっ？・・・・誰よそれ」