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最終更新日:2024年04月26日
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第461話「鍵・前編」

居間のテーブルの上に見慣れない鍵が置いてあった。
どこの鍵かと手に取って見ていると、祖父がやって来て僕のかと訊いた。僕は違うと言って祖父に渡した。
「どこの鍵だろうな?」
「玄関とか車じゃないみたいだね。爺ちゃんの机のじゃない?」祖父の部屋には、大昔から使っている座机がある。かなりの年季ものだ。
「それはもう試した」
「じゃ、物置とかは?」
「それも試したし、家中の鍵穴のあるもの全部試したけど、どこにも合わんかった。どこの鍵なんだろう」
「それならきっと、その鍵を使う物が壊れて処分しちゃったけど、鍵だけが残ったってことじゃない?」
「あり得るな。それか普段は使わない物だな」と言った後、急に祖父は何かを思い出したらしく、鍵を手にして自分の部屋の押し入れを開けてスーツケースを引っ張り出した。
だが、鍵穴は予想以上に小さく、どう見ても入りそうになかった。祖父はとても残念そうな顔をしている。
「親父の机の鍵とか?」
「それもさっき試した。あれだな、お前が言った様に物が無くなって鍵だけが残ったって事だな」
「多分、そうだと思うよ」
それから十日程経った頃、居間で祖父とテレビを見ている僕のところに父が来て言った。
「定規持ってないか?」
「定規?何するの?」
「机の引き出しに何か引っ掛かったみたいで、開かないんだ。隙間から定規でも突っ込んでみようと思って」
僕は祖父を尻目に、鍵をかけたんじゃないかと言うと、「鍵なんてかけた事ない」と父はキッパリ否定した。
祖父の顔を見るとシマッタと言いたげな顔をして口をポッカリと開けている。
祖父は何かとんでもない失敗をした時に、よくこんな顔をする。とりあえず定規を渡すと、父は自分の部屋へと消えて行った。
「そっか、あいつの引き出しで試した時に鍵かけちゃったんだな」と自分なりに状況を分析をする祖父。そんな祖父に僕が言った。
「もしかして、あの時の鍵って・・・」
「うん、捨てた」つづく

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