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最終更新日:2024年04月26日
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第510話「闇の中の二人」

日が少し長くなったとはいえ、午後五時を過ぎると日も暮れてくる。
「うわ~綺麗っすね。雪原に太陽が沈んでいきますよ。感動的ですね~」と山本。
「お前さ、なに能天気な事言ってんだよ」と羽賀が少しイラついた様に言った。
「それにしても僕等は余りにも文明に頼り過ぎていますよね。昔はなかったじゃないっすか、携帯なんて」
「そんなの携帯を忘れた言い訳にはならんぞ」
「お言葉ですが、羽賀さんだってそうじゃないっすか、携帯は持ってるけど、充電し忘れて使えないんだったら、忘れたのと大して変わらないじゃないっすか」
「変わるよ。全然違う。俺は確かに夕べ充電をし忘れたけど、携帯を持っていくっていう意識はちゃんと持ってるんだ」
羽賀の携帯が電池切れだと気付いたのは、ほんの五分ほど前だった。
「使えない携帯でも?」
「使える使えないじゃなくて意識の問題だっての」
「意味が分からないっすね。無理やり自分の立場を有利な方へ持って行こうって意図が見え見えっすよ」
その時、電池切れだったはずの羽賀の携帯が鳴った。
「ほら~見ろ!俺はこういう事を言ってんだよ。あっ、会社からだ。はい、あっ加藤さん、あら?もしもし?もしも~し」
携帯は、ぽよ~んという情けない音と共に画面が真っ暗になった。
「なんか蛇の生殺しっていうか、無人島で船を発見して必死に叫んだけど、気がつかないで行っちゃった様な気分っすね」山本が苦笑いをしながら言った。
出発前にガソリンを入れようと二人で話していたにもかかわらず忘れてしまい、挙句の果てのガス欠である。
携帯が使えない二人は車を道端に乗り捨て、先ほど訪問した得意先であるゴルフ場へと引き返す事にしたのだった。
日もすっかり暮れた中、雪原の遥か遠くに目的地の明かりが薄っすらと見える。
二人はまるで遭難しかけた船が、やっと見つけた灯台の明かりを目指す様に、漆黒の闇の中にぬっと横たわる真っ白な道の上を、とぼとぼと歩き続けた。

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