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最終更新日:2024年04月19日
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第643話「律子さん88」

今日は一月三日。お昼にお雑煮を温めながら私が主人に言った。
「お餅ももう飽きたよね」
「そう?餅は好きだから別に平気だけど」とお笑い番組を見ながら、ソファーに寝転がる主人。
お雑煮もこれが最後だし、我慢しよう。
「ねえ、お餅何個入れる?」
「二個~。お汁粉も二個~」
やがて二人で食卓に着く。
「何か他にやってないの?」
私がテレビの方を見て言う。
「どこ回してもこんなのばっかりだよ。芸人にとっちゃこの時期が一番の稼ぎ時なんだろうね」
「この人達って芸人なの?見た事ないけど」
「売れっ子だけじゃ足りないんじゃない?見た事もない芸人がたくさん出てるよ」
お雑煮を食べ終え、お汁粉を手に取りテレビから目線を外して私を見る主人。
「きな粉餅も二個お願い」
「えっ?まだ食べるの?」
「うん、それから豆餅も二個焼いて欲しい」
「え~っ、全部でお餅八個だよ。食べ過ぎでしょう」
「いいじゃん、正月ぐらい」
「太ったって知らないよ」
「大丈夫だって」
その日の晩、風呂場の方から主人の悲鳴が聞こえた。
「三キロって、嘘でしょ?」
「ほら、やっぱり太ってた。お正月は芸人だけじゃなく、あんたの体重も稼ぎ時だったんだね」と私が笑う。
「あっ!パンツ!」と慌ててパンツも脱ぎ捨てるが、当然ヘルスメーターの数字はピクリとも動かない。
「藁にもすがるってやつだね。パンツが三キロもあるわけないでしょ」
ヘルスメーターの上で素っ裸になった主人が、怯えた子犬の様に私の顔をじっと見つめる。
「そんな顔してもダメ!明日からダイエット決定~。 明日からは、コンニャクと野菜がメインの献立となりま~す。あんたの為に私も付き合ってあげるんだから、文句言うじゃないの!全くいい迷惑なんだから」
諦めた主人が、ガックリとうな垂れる。
私はリビングに戻り、お腹の力を緩め、溜息交じりの深呼吸をすると、今迄へこんでいたお腹が別の生き物の様に、ふわっと飛び出した。

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