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最終更新日:2024年03月29日
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第659話「律子さん90」

会社から帰宅してポストを開けると、例のマスクが届いていた。
私は何気にマスクを下駄箱の上に置くと、買って来たばかりの食材が入ったトートバッグを持って台所へ。
「あ~っ!これか、ちっちぇ~」主人の声が玄関から聞こえて来た。
「ただいま~。アベノマスク届いたんだね。だけど今更遅いよね。もうマスクは出回ってるんだからさ」
「まあね、でも一応もしもの時の予備として置いておいたら良いんじゃない?」
「そうだね。何でも予備は大切だよね」
「家も色々な面で予備があればね~」
「えっ?予備って例えば?」
「お金とか」
「ああ、なるほど。そういった面じゃ予備を作るのは、キツイよね」
「これからの時代、老後にも二千万円必要だっていうからさ、我が家も少し頑張らなきゃね。余裕のある老後が過ごせる様にさ、だから車も、もう一年乗ろうね」
「いや、車は買わなきゃ。それより君も服買ったりして贅沢しない方がいいよ」
「服は私の少ないお小遣いの中でやり繰りしてるんだから文句ないでしょ。車をどうしてもっていうんだったら、お小遣いで払って」
「無理だよ、そんな事。買いたい物も買えない人生なんてつまらな過ぎる」
「じゃ、死になさいよ」
「またそんな事言う」
「あ~あ、奥さんにも予備があればな~若くて美人なら人生楽しいのにな」
「ほ~う、この甲斐性なしがよく言った。いいよ、作れるもんなら作ってみな」
「冗談だよ。冗談」切れそうな私に主人が慌てる。
その時、スマホが鳴った。
会社の山田からだ。これはナイスタイミング、主人を驚ろかせてやろう。
「山田君?えっ?逢えなくて寂しい?いやだ~逢ったばかりじゃない。大丈夫よ。バレても平気だから。ご免、また後でかけ直すね」まだ残業中で仕事の件だった。
一方的にしゃべって切ったので、今頃山田の頭の中は???だろうが、後でLINEでもしておこう。
「山田君って誰?」蒼ざめた顔の主人が声を震わせる。
「予備だよ。若くてイケメンの。あなたの予備」

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