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最終更新日:2020年09月29日
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第642話「年賀状」

分厚い老眼鏡を掛けて祖父が何か書き物をしている。
僕が傍に行って覗き込む。
「あっ!年賀状?もう?」
「印刷が出来上がったからな」と祖父は机の上から目を離す事なく僕に言う。
年賀状とは、去年お世話になった人への感謝の気持ちを伝える物なので、年が明けてから書く物だと、祖父は言っていたはずだ。
その事について僕が指摘すると、祖父は笑いながら言った。
「本来はそうだけど、まあ暇だしな。俺ばっかり拘る事もないかと思ってさ」
「信念を曲げるってか」
いつの間にか父がやってきて、年賀状を書く祖父を見て言った。
「そこまで大袈裟なもんじゃない。元旦に全部書くのがきつくなったから、今の内に少しずつな」
「それが普通に皆がやってる事だけどな」と笑う父。
そこに祖父の友人である隣りの家の源じいこと源造さんがやって来て言った。
「結構な枚数出すんだな」
「ああ、でもやっぱり毎年少しづつ減って行くな」
「今年は何枚なの?」と僕。
「あんまりギチギチなのもあれだから、ちょっと余裕を持って百十二枚だな」端数の二枚が余裕の分なのか・・・?もう少し余裕があってもいい気がする。
「減った分は相手が死んだからか?」と源じい。
「全部は死んどらんだろう、自然と縁が無くなった人もいるよ。そりゃ」
「そうやって少しずつ減って行くんだな」しんみりとした口調で源じいが言う。
「そうだな~年賀状を辞退するなんてのも居たり、ボケちまったのも居るしな」
「まあ、仕方ないな、長生きすりゃそういう事になる」と源じいが笑う。
「そうだな、仕方ないな。俺も本当は、いつ逝っても良いんだけど、婆さんが迎えに来ん事にはな~」と祖父が寂しそうに言う。
「心配ないって、その内にお迎えが来るさ」と源じい。
「だけど、同年代からの年賀状がゼロになるのは、何年後だべな。お前からの年賀状も来なくなったら、きっと寂しいよな。俺は耐えられるべかな?」と祖父。
「あっ!お前!しおらしい事は言ってても結局は最後まで生き残るつもりだな!」

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