奥さんが子ども二人を連れて、実家の方に泊まりに行ってるから、遊びに来ないかと友達のＫに誘われた。引っ越しをしたばかりで、家が分らないだろうからと、Ｋは、わざわざ僕の家まで迎えに来てくれた。Ｋの仕事はフリーター。もう何年続けているのだろうと思うぐらい、長い間続けている。
「子どもが小さいから奥さんは働けないんだろ？」彼の家に向かう車の中で僕が言った。
「うん、そういう訳じゃなくて、共稼ぎって俺、嫌いなんだ。男は仕事で女は家を守るってのが俺の理想なんだよ」
「意外と考えが古くない？」
「そう？これって動物本来の姿だと思うんだけどな」
「雄が狩りをして雌が子どもと巣を守るってやつか？」
「そうそう。俺は動物本来の生き方を忠実に守ってるって訳よ」
「でもバイトだけでやっていくってのも大変だろう？いくつバイトしてるんだ？」
「今は四つだな」
「四つ？そんなに？どうやって？」僕は驚いて言った。
「まず朝六時から朝九時までが一つで、その後いったん家に帰って、朝メシ食って着替えてから、今度は十時から午後三時迄が二つ目。それから午後四時から午後九時迄が三つ目、ここでもいったん家に帰って晩メシ食って午後十時から午前二時迄バイトで四つ。帰って風呂入って就寝ってのを月曜から土曜迄続けてるんだ」
「寝るのはいつ？」
「だいたい三時過ぎかな」
「起きるのは？」
「ギリギリ迄寝てるから五時三十分ってとこかな？」
「じゃ、睡眠時間は一日二時間ちょっとってとこか」
「それがさ、最初と最後のバイトは、近くのコンビニに行ってるんだけど、これがさ、くっ付いちゃう事があるんだ」
「くっ付く？」
「そう、最後のバイトが午前二時に終わるんじゃなくて午前九時迄って事さ。そのシフトに入ってる人がよく休むもんだからさ」
「うん？それって寝る時間が無くなるって事じゃないか？」

つづく