分厚い老眼鏡をかけて祖父が新聞を見ながら言った。
「由伸が巨人の新監督か」
「結構大胆だよね巨人も」
「そうだな。結局他に居ないんだろう。みんな歳とったし、誰でも良いって事にはならんからな。この辺で思い切って若返るってのも良いかも知れんな」
「巨人も長い目で見てる様だしね」
「それにしても今年の日本シリーズは、パッとしないな。ヤクルトとソフトバンクだもんな。せめて巨人か日ハムが出てくりゃ見る気にもなるんだがな」
「おっ、日ハムも応援してるんだ。巨人オンリーだと思ってたけど」
「そりゃ、北海道だし自然と日ハムを応援したくなるだろう。でも基本は巨人だな。だけど野球は昔の方が面白かったな。ONの頃は勿論だけど、松本とか淡口、河埜、篠塚なんか居た頃も面白かったな」
「ああ、篠塚って居たね。セカンドだったよね」
「そうそう、良い選手だったな。お前は巨人のV９時代は知らんだろう？」
「流石にそれは知らないよ」
「巨人が９連覇したんだ」
「昔はドラフトなんか無かったから、良い選手がみんな巨人に入っちゃったんだろう？嫌でも強くなっちゃうよね」
「まあ、そうだな」
「でも、最近は爺ちゃんも野球見なくなったんじゃないの？」
「あまり放送してないだろう。昔は仕事が終わって飯を食った後にビールを飲みながら、巨人戦を見るのが、何よりの楽しみだったな。相撲でも野球でも昔の方が面白かった」と言いながら新聞を捲る祖父だったが、何枚か捲ると、目が一点に集中した。
「おっ、噂をすれば、これはもしかして巨人のV9時代の映画じゃないか？面白そうだな」と言って、少し下がり気味の老眼鏡をググっと指で押し上げながら祖父は嬉しそうに言った。
「どうだ、一緒に行か見に行かんか？」
「何でそんな古い時代のものが、今更映画になる訳？変だろう。で、何て映画？」
「進撃の巨人だとよ」