チコは決して器量が良い方ではなかったが、今思うとチコ以上の親友は後にも先にもいなかった。何処に行くのにも一緒で、お互い言葉にしなくても、考えてる事は何でも分かる無二の親友だった。男勝りと言う気性から、よく男子からも、いじめられたりしたが、僕とチコがタッグを組めば、最強のコンビで、いじめっ子も一目置く存在だった。
やがてお互い成長し、高校も別々となり、遊ぶ事もなくなったが、道端などで会うと「おっす！元気か。いつの間にかオッパイでっかくなったな」「そう？触ってみる？」「あ、いや。バカ」と、こんな冗談をお互い言い合いながら家路を共にした。
ある日の事。いつもは胸を張って堂々と歩く筈のチコが、僕の前を背を丸め、うつむき加減で歩いていた。僕は後ろから片を叩き「おっす！どうした？元気ないな。暗いぞ」「うん・・・ご免」その後も何度かチコに会ったが、昔の様に明るく元気なチコは何処にもいなかった。すっかり別人の様になってしまった。僕の方もクラブや友達との付き合いなどで、チコとはすっかり縁遠くなってしまい、道端で会っても、なぜかお互い避ける様にった。暫くそんな関係が続いたが、このままではいけないと思い、ある日思い切ってチコに声を掛けてみた。

つづく