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最終更新日:2024年04月19日
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第343話「セミのように」

 得意先からの帰り道。山本が運転する車の中、助手席には羽賀が乗っている。何故か車内の雰囲気は暗い。
「今日はやけに暑いな」と言いながら羽賀は車の窓を開けた。
ゴウゴウという風の音と一緒にセミの鳴き声が車内に充満する。
「北海道って○×#△・・」羽賀が何を言ってるか山本には聞こえない。
羽賀は窓を閉めると、エアコンのスイッチを入れながら言った。
「北海道ってこんなにセミが多かったっけ?」
「いえ、こんなに居なかったと思いますよ」
「最近は湿度も高いし、北海道らしくカラッとしてないもんな。地球温暖化の影響かな?」と言いながら羽賀は、さっき販売機で買った缶コーヒーを一口飲んだ。
「それにしてもセミ多いな」
「セミがこうやって鳴けるのも一週間だけっすからね。何かそう考えると、多少のうるささも、仕方ないかなって思えちゃいますよね」と言って笑う。
「偉大な生き物だ」と羽賀。
「エッ?どうしてっすか?」
「何でセミは鳴くか知ってるか?」
「メスを呼んでるんすよね」
「そう。もしあの泣き声を日本語に訳せるとしたらどうなると思う?」
「良い女居ないか~やらせろ~っすかね」と笑いながら言う山本。
「そうそう。そんなとこだろうな。仮に人間が、めし食ってる時もトイレ行ってる時も、休まないでセミの様にやりた~い、やりた~いって叫び続けたらどうなると思う?それも半端な声じゃなく、全身全霊を込めて叫び続けるんだよ。一週間も経たない内に死ぬぞ」
「なるほど」と納得する山本。
「セミは鳴く為だけに土の中で七年間必死に生きてるんだ。なっ、偉大な生き物だろ?人間もセミの様に何か一つ秀でたものがあればそれで良いのかも知れない。俺にはそれが無いが、お前にはある」
「どう言う事っすか?」
「お前は怒られ上手だ。それはお前が唯一、他人より秀でた部分だよ。お前は偉大だ。もうじき会社に到着するが、部長にズバッと怒られて来い。俺は直帰する」

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