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最終更新日:2024年04月19日
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第344話「永遠のじじい」

 お盆休み、今日は久し振りに涼しい。そんな中で文庫本を片手にコーヒーを飲んでいると、祖父がやって来て言った。
「何を読んでるんだ?」
「ゼロ戦パイロットの本」
「ゼロ戦?戦争の本か?」
「そうだね。『永遠の零』って本だよ」
「面白いか?」
「うん、凄く面白い。爺ちゃんも読むか?」
「神風特攻隊か?」
「それが、そうじゃないんだ。死を恐れるパイロットなんだ。腕は一流なんだけど、決して無茶はしなくて、仲間の飛行機がみんな撃墜されても、ちゃんと生き残って帰って来るんだよ。みんなに臆病者扱いされるんだけど本人は全く意に介さないと言うか、そどころか、命を大切にしなきゃダメだって事を同期や後輩に言うんだよ。お国の為に喜んで命を差し出すって時代に凄い人だなって」
「変わった本だな。終わったら貸してくれ」そう言った後に思い出した様に祖父は言った。
「今日は終戦記念日だな」
「爺ちゃんは玉音放送を聞いたんだよね」
「聞いたよ。あの時は情けなくて涙が出たよ。無条件降伏だからな。俺は子供ながらに連合艦隊が米国なんかあっと言う間に退治してくれると信じてたんだけど、とっくにそんなものは無くなってたんだもんな。国民全部がっ大本営に騙されてたんだから酷い話だ。
でもあの時、戦争に負けていなかったら、今もまだどこかの国と戦争をしていたかも知れないな」
僕はその日の内に本を読み終えると祖父に渡した。早速分厚い老眼鏡を掛けて祖父は読み出した。この日から祖父は朝から晩までのほとんどの時間を読書で過ごした。
三日後、祖父は僕に本を返して言った。
「久し振りに本を読んで感動した」と真っ赤な目をして言った。
「良い本でしょ?」
「もしかして、このやりとりを求人に載せるのか?」と祖父。
「う~ん。オチがないしね」
「オチ?今回はそんなもの必要ないだろ。この年寄りの美しい涙で締めくくれば」

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