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最終更新日:2024年04月12日
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第587話「ヤバイかも」

祖父が分厚い老眼鏡越しに、本屋のカバーが掛かった本を読んでいるのを見て、僕が言った。
「なに読んでるの?」
「ああ、俺のこれからの人生にとって重要な本だ」
「爺ちゃんの残り少ない人生に重要な本ってなに?今から読んで間に合うの?」
「残り少ない人生だからこそ、大切な事なんだ」
「へ~っ、どんな本?」
「いいだろう、何だって」
「ボケ防止の本とか?」
「お前はどおしてそんなにデリカシンが無いんだ!」
「デリカシーね、それ」
「まあ、何でもいい、もそっと柔らかく言えんのか」
「何を?ボケの事?」
「ボケボケ言うな!もし俺が本当にボケたら大変な事になるぞ!」
「えっ?どうなるの?」
「それはあれだ、あの何だ・・・色々と大変な事になるんだ!」
「だから大変って何だよ」
「そんなのなってみんと分からんわ!」
「ボケを柔らかく言うとなに?痴呆とか?」
「そうだな、その方がまだ優しいな。胸にズンと来ん」
「ボケはズンと来るんだね」
「うん、来る」と頷く祖父。
「じゃ、認知症ってのは?」
「ああ、それが良いかな」祖父は満足気に頷くと、ゆっくりとブックカバーを外した。
(認知症にならない・・・)随分と長ったらしいタイトルで、それに随分と高価だ。
「爺ちゃんそんな事気にしてたんだ。もし介護が必要になったら、俺達家族でちゃんと世話するからさ、あまり気にしない方がいいって、そんなことより健康に気を付けて長生き
してよ」
「お前は優しい子だな、俺は本当に幸せ者だ。この本を読む限りじゃ、俺はまだ大丈夫みたいだぞ」
「そうだよ、爺ちゃんはまだまだしっかりしてるよ」
それから一週間ほどして。
「最近は随分と本の値段も上がったもんだな」と祖父は袋から買って来たばかりの本を取り出した。
タイトルは(認知症にならない・・・)同じ本・・・。
僕が驚き、思わず口を半開きにして祖父を見ると、祖父は笑いながら言った。
「何だお前のその顔、ボケ老人みたいだぞ」

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