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最終更新日:2024年04月19日
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第593話「律子さん81」

母はうっ憤が溜まると私の家に来て父の愚痴をこぼす。いつ果てるとも知れない母の愚痴を延々と聞き続けるほど私は暇じゃない。段々鬱陶しくなる。
「私はさ、忙しいのよ。毎日が日曜日のお母さんとは違うんだよ。働いてる私にとって、日曜日がいかに貴重なものか分かる?」
ここでいつもなら、母は大逆襲して来るのだが、なぜか今日は違った。
「そうだよね。ご免ね」と元気なく俯く母。
思わず拍子抜けする私。
「私ね、お父さんと別れる事にしたから。離婚届にもハンコ押したし、後はお父さんだけ」
「えっ?ちょっと何言ってんの?」思わず狼狽える私。
「卒婚ってやつだよ」まさか母の口からそんな言葉が飛び出すとは思わなかった。
「生活はどうすんのよ」
「ここの家って部屋が二つも空いてるじゃないの、あんた達共稼ぎなんだから、私一人ぐらいどうともなるんじゃない?まさか離婚して独り身の年老いた母親を世間の寒空の元に放り出すなんて事しないよね」
「・・・そ、そんな事は」
そんな時、父から電話が。
「母さん居るか?」
母は父からの電話を察した様で、無言でかぶりを振る。
「何だ、まだ怒ってるのか。書類にハンコ押したって言っておいてくれ」
「ちょっと待ってよ、何なの急に、そんなに簡単に割り切れるものなの?」
「確かに長い付き合いだったからな。俺も散々迷ったけど、もう我慢の限界だな。母さんもそうしようって言うし仕方ないよ」
母の方を見ると、こちらに見せている背中が小刻みに震えていた。
「これからどうするの?考え直す気はないの?」
「いや~もういいだろう。充分だよ」
「何言ってるの、これからじゃないの、二人で何処か旅行するとか第二の人生を楽しめばいいじゃない」
「お前どうしたんだ?何か変だぞ。何でそんなにあの車に拘るんだ?」
「えっ?車・・・???何よ車って」
「車を新しいのに買い換えたんだよ。お前もそうしろって前に言ってたろ」
「じゃ、ハンコって?」
「車の売買契約書だ」
殺気立った顔で母をキッと睨む私の顔を見て、涙を流しながら笑う母の声が部屋中に響き渡った。

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