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最終更新日:2024年04月19日
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第592話「古き者達2」

大声で叫ぶ健太の声を聞きつけたのか、健太の祖父である隣りの爺ちゃんがやって来た。家の祖父とは長い付き合いである。
健太は自分の祖父を源爺と呼び、僕の祖父を爺ちゃんと呼ぶ。分かり易くする為に健太が考えた呼び方だ。
ちなみに源爺というのは、名前が源造だからである。
「何を騒いどるんだ?」源爺が訊くと、健太は興奮しながら小太郎の説明をした。
「そっか、小太郎もお前に可愛がってもらって幸せだったな」と源爺は言うと、小さな箱を健太に手渡した。
健太がおそるおそる箱の蓋を開けると、何やらピーピーと可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
覗くと中には鳥の雛が入っていた。
「これなに?鳥?」産毛の様な羽を身に纏った小鳥を見て健太は訊くが、生まれて初めて見る生き物に、かなり動揺している。
「インコだ。裏の婆さんとこで雛が孵ったから貰って来たんだ。めんこいだろう」
「うん、可愛い~」健太はピーピーと鳴き続けるインコの頭を小さな人差し指でそっと撫でるが、急に顔を上げ、不安気な顔で訊く。
「これも直ぐ死ぬの?」
「いや、お前が高校生になるまでは生きてるはずだ」
「え~っ!じゃあ爺ちゃん達より長生きかも」健太はすっかりインコが気に入った様で、ずっと箱を膝の上に乗せて飽きる事なく眺めている。
そんな中、飼い主にすっかり忘れ去られたカブトムシの小太郎は、動きをピタリと止めていた。
「死んだか?」源爺が指でつつくが微動だにしない。
「死んだな」と祖父がポツリと言う。
源爺はインコに夢中になっている健太の方を一瞬振り返るが、また直ぐに小太郎に目を戻すと、静かに言った。
「古い者はみんなこうやって忘れ去られて行くんだな」
「仕方ないさ、そういうもんだ」祖父が笑みを含めて呟く様に言った。
インコのピーピーという鳴き声の中、老人二人は寂しそうな顔で、小太郎の亡骸をじっと見つめていた。

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