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最終更新日:2024年03月28日
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第677話「律子さん94」

母は呼び出し音がする携帯の画面を見ると、無表情のまま電源を切った。
夕べ父と喧嘩して飛び出して来た母に、喧嘩の原因を聞いても話そうとしない。
「もう良いんじゃないの?」
「顔を見るだけでムカツク。絶対まだ帰らないよ」どっちもどっちなんだろうと思いながら、私は溜息交じりに言った。
「昔は喧嘩なんてしなかったのにね。お父さんが定年退職してから随分と喧嘩が増えたんじゃない?」
「そうなの、今はず~っと家に居るでしょ、だから面倒なのよ。おい!お茶。おい!メシ、おい!風呂。毎日何回も同じ事の繰り返し、私は何?召使いなわけ?」
「まあ、昔の人だからね。亭主関白ってやつだよね」
「今どき時代遅れもいいところだよ。もしあんたの亭主があんなんだったら、どうする?」
「おそらくブチ切れるだろうね。何様だ!って」
「でしょ~、私だって同じだよ。いくら昔の人だからって、今を生きてるんだから、今の時代に合わせて生きてもらわなきゃ」
「まあ、そうだけどさ、そういう癖を付けさせたお母さんも悪いんじゃないの?」
「どうせ仕事で一日居ないんだし、家に居る時だけ、はいはい聞いてればいいやって思ったのがいけなかったんだね。だから、な~んにもできないのよ。茶碗も満足に洗えないんだから。 それでもね、最近は大分良くなって、今の時代・・」母がそこまで言い掛けると、父から電話が来た。
「母さんまだ怒ってるか?」
「怒ってるみたいだよ」
「そっか・・俺もちょっと手が滑ってな。迂闊だったな~悪かったって謝っておいてくれ」温厚な父が母に手をあげた。私の知らない父の一面を知り、ショックを受けた。
「最近は茶碗洗ったり、掃除機かけたり、家の事を手伝う様にしてるんだけど、慣れん事やるもんだから母さんが大切にしてる茶碗を割っちゃってな」
「茶碗?手が滑ったって・・・茶碗を落として割ったってこと?」
「うん、結婚三十周年で九州へ一緒に旅行した時に買った夫婦茶碗なんだ」

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