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最終更新日:2024年04月19日
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第697話「律子さん97」

最近は日曜日になると、いつも母がやって来る。
「お父さんは?」
「カラオケ会だって」
「お母さんも一緒に行けばいいのに」
「冗談じゃないよ、私を殺す気かい?あの人達の歌を聞くなんて、殆ど拷問だよ」
一度は行った事がある様だ。
「そんな事より、お昼は何か出前でもとらない?お寿司なんてどう?」
「お寿司ならスーパーのでもいいんじゃない?」
「いつも美味しそうだと思って見てはいるんだけど、私って食べられるネタが限られてるからさ」
「ああ、そっか食べられないネタの方が多いもんね」
「そうなんだよ、お寿司は大好きなんだけどね~」と残念がる母を見てると、何だか少し可哀想になる。
「久し振りに回転ずしでも行こうか」
「いいよ、お金も掛かるし」
「いいじゃん、私も食べたいしさ」
「私、お金あんまり持って来てないよ」
「大丈夫、私が奢るからさ、たまにはいいじゃん、行こう行こう」
「わ~嬉しい」と手を叩き、子供の様にはしゃぐ母を見て、少しは可愛いところもあるなと、思わず微笑ましい気持ちになる。
お店へ行くと、店内は昼時にもかかわらず、思ったほど混んではいなかった。
席に案内され、私は母の言う通り、注文用紙に寿司ネタを書き込んで行く。
「ウニでしょう、イクラでしょう、ボタンエビにアワビ、それからカニも食べたいな」母は、高級ネタしか食べない事を思い出した。
「そんなに食べられるの?」
「大丈夫だよ、お寿司は大好きだから」さっきは母のはしゃぐ姿を一瞬でも可愛いと思った私がバカだった。注文は全く可愛気がない。
そんな私の気持ちを察したかの様に、母は財布からお店のクーポン券を取り出すとカウンターの上に置いた。
「今回のスタンプでいっぱいになると思うから、次回はそれを使ってね」ボタンエビを幸せそうな顔で口に運ぶ母の顔を見ていると、まあ良いかと思う。
「ありがとう。次回使わせてもらうね」私はそう言うと、母とお揃いの財布に期限切れのクーポン券をしまった。

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