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最終更新日:2024年03月28日
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第540話「たるんだお腹」

Aはまだ飲み足りないのか、これから自宅で飲もうと僕を誘った。
「こんなに遅くに行ったら迷惑だろ、奥さんに悪いし」という僕の言葉を無視してAはタクシーの中へ強引に僕を押し込んだ。
「俺の腹がどうしてへこんだのか気になるだろう?」Aに言われて腹を見る。
「腹?ああそういえば少しへこんだか?」
「ふふふ気になるだろ?」
「いや、別に」
「またまた~」
「現に言われるまで気が付かなかったし」
「8キロも減ったんだぞ」
「下痢でもしたか?」
「きっと家に来たら驚くぞ」
「今度は何だ?またガラクタが一つ増えただけじゃないのか?」Aは痩せる為にありとあらゆる器具を買ったが、どれも長続きはせず、狭いAの書斎で埃をかぶった状態になっている。
最近では、有名サッカー選手がCMに出ている腹筋マシーンを買ったが、これも今は使ってない様だ。
「今度はガラクタにならないよ、オブジェにもなるし」
そんな会話をしている間にAの自宅へと到着した。
奥さんに遅くに来た事を詫びる。
「どうせまた強引に連れて来られたんでしょ?」
「そう、拉致に近いかも」笑う奥さんの後に続いて居間に入ると、なるほど今迄とは確かに違う。
吹き抜けになった壁には、色とりどりの意味不明な形の物が沢山貼り付けてあり、それは二階の廊下の下の壁まで続いていた。
オブジェとしては、何だかゴチャゴチャとして気忙しい感じがするが、こうして実際に見るのは初めてだ。
「ボルダリングか・・・」
「教室にも通ってるんだ。お前も一緒に行かないか?」
「またまた御冗談を」
それから半年後、僕は迎えに来たAの車の助手席に乗ると、たるんだ自分のお腹を見下ろした。
やがて別人の様に引き締まった身体のAが言った。
「よし、着いたぞ」
Aにできて僕にできないはずはない。僕はそう思いながらボルダリング教室の看板を見上げた。

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