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最終更新日:2024年03月28日
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第591話「古き者達1」

隣りの家の孫で四歳児の健太が、カブトムシの入ったプラケースを持ってやって来た。
「おっ、まだ生きてるのか、随分長生きだな」僕はプラケースを覗き込んで言った。
今は世界中のカブトムシが簡単に手が入るが、健太が持って来たのは、昔ながらの日本カブトムシだった。
僕も子供の頃によく買って貰ったものだ。
「小太郎は夏に買ってもらったっばかりだから、まだ死なないもん」
「カブトムシって寿命が短いんだ。だから秋にはみんな死んじゃうんだよ」
「うそだ!小太郎はまだ死なないもん」と言いながら健太はプラケースから小太郎を取り出すと、床の上に置くが動きが鈍い。
「ほら、夏はもっと元気だったけど、今はもう殆ど動かないだろ?」
「うん、俺が車のおもちゃとか引っ張らせたから、元気無くなっちゃったのか?」
「いや、小太郎はもうお爺ちゃんなんだよ」そしてゆっくりと動いていた小太郎の動きがピタリと止まった。
「あれ?小太郎!どうした、小太郎!」健太の目には、見る見る涙が溢れて来る。
「小太郎~大丈夫だ!死ぬな小太郎~生きろ~」大声で泣き叫ぶ健太の声を聞き届けたかの様に、小太郎は再びゆっくりと動き出した。
「小太郎は俺の言う事が分かるんだ!」と健太が興奮する様子を見て、傍に居いた祖父が笑いながら言った。
「まさか、そんな馬鹿な事があるか、偶然だって」
そしてまた小太郎の動きが止まった。
「小太郎~頑張れ~死ぬんじゃな~い」真っ赤な顔で声を張り上げる健太。
するとまた、のそりと小太郎が動き出す。
「おお~本当だ。健太の声が聞こえてるんだ」と祖父が驚いた顔で言った。
「毎日餌やってたから俺のこと分かるんだ!小太郎!頑張れ、死んだらダメだ!」
「そうだな。大事に飼ってたもんな」と祖父と僕は笑いながら頷いた。
その後も動きを止める度に健太の小太郎を励ます声が家中に響き渡った。
「小太郎~頑張れ」   つづく

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