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最終更新日:2024年04月26日
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第694話「こいこがれ」

祖父が鯉の写真が載った雑誌を見ていた。
「それって鯉専門の雑誌なの?」と僕が訊く。
「ああ、そうだ」
「鯉飼うの?」
「うん、昔から飼ってみたかったんだ」
「水槽じゃ無理っしょ」
「暖かくなったら庭の空いた所にちょこちょこっと池を作ろうと思ってな」
「鯉を飼うなら、ちょこちょこっとっじゃダメっしょ」
「そっか、大きくなるか」
「そうだよ、何匹か飼うんだろうし、それなりの大きさとか深さもないと、冬は凍れちゃうだろうしさ」
「そうだよな、北海道じゃ深さがないとな・・・で、どれくらい掘ればいいんだ?」
「さあ~分かんないけど、1mは必要じゃない?」
「自分じゃ無理か」
「大変だと思うよ、堀った後の土の処理もあるだろうし、隣りの源じいから貰った金魚で十分だよ」僕は金魚が泳ぐ水槽を見て言った。
「池を作るのは昔からの夢だったしな」初めて聞いた。
「業者に頼んだら結構高いと思うよ。濾過槽置付けたり電気代だって掛かるだろうから、爺ちゃん一人じゃ決められないよ。親父やお袋にも相談しないと」
「そっか、電気代も掛かるのか・・・」一見、諦めたかの様にも見えるが、自分の考えを、そうそう簡単に変える様な人ではない。
案の定、相談ではなく、父と母相手に池で鯉を飼う事がどれほど家族の癒しになるかを熱く語り出す。
そんな祖父に、母がスマホを見ながら言った。
「爺ちゃん、鯉って何年生きるか知ってる?今調べたら二十年から七十年だってさ、その頃って爺ちゃん幾つ?」
「七十年か!もうとっくに死んどるし、骨も残っとらんかも」と落ち込む祖父。
「何だ?辛気臭い顔して」隣りの源じいが入って来た。
「貰いもんだけど、これでいっぱいやるべ」と上機嫌な源じい。
「美味そうだな」と皿に綺麗に並んだ切り身を見て祖父が言った。
「九州の知り合いが送って来たんだ。こっちじゃあんまり食わんけどな、二月が旬で、寒鯉って言うそうだ」

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