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最終更新日:2024年04月19日
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第703話「どっち?」

口を半開きにした祖父は、広げている新聞を見る事もなく、床の一点を見てぼ~っとしている。
年齢が年齢だけに、こういう行為をされると、結構ドキリとする。
「爺ちゃん」
「・・・・」
「爺ちゃん!」
「おっ?何だ?」
「ああ良かった~脅かさないでよ、どしたの?さっきからぼ~っとしてさ」
「おお、ごめんごめん」
「ボケちゃったかと思ってびっくりしたよ」
「ははは、俺はまだ大丈夫だ」と笑う祖父。
「考え事?」
「うん、考え事っちゅうかな・・・さっき、田中の婆さんから電話が来てな」
「近所の田中さんね」
「最近、爺さんがボケたかも知れんって言うからよ、様子見に行って来たんだ」
「で?どうだった?」
「俺が行った時は、いつもと変わらんかったな。まあ、ああいうのは、徐々に進行して行くもんだからな」
「じゃ、まだ初期段階って事なんだ」
「ああ、きっとそうなんだろうな、息子に知らせた方が良いかどうか悩んどったからな」
「えっ?あそこの家って息子さん居たっけ?娘さんが居たのは知ってたけどさ、モデルみたいに綺麗な人だったよね」
「やっぱりか、そうだよな。嫁に行ったあのベッピンさんしか子供はおらんはずだよな」と頭を捻る祖父。
「もしかして婿さんの事じゃない?きっと義理の息子の事言ってるんだよ」
「ああ、そうか、そういう事か、そういえばあの婆さん、普段からよく婿さんの話をしてたもんな」
その時、玄関の方で声がした。
「爺ちゃん、田中さんだよ」
「ははは、先程はうちの家内が大変失礼しました」ツルピカ頭の田中さんが祖父にお辞儀をする。
「そうか、ボケて来たのは婆さんの方だったのか・・・」と祖父は全てを悟った様だ。
「あんたんとこ息子はおらんかったもんな」
「はい、息子はおりません」
「一人娘だったよな」
「いえ、娘もおりません」

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