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最終更新日:2024年04月26日
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第706話「律子さん98」

玄関のドアを開けると、リュックを背負った母がくたびれた顔で立っていた。
「どうしたの?」と私が驚いて訊く。
「歩いて来たの」と母。
「うっそでしょ~」歩く事が大嫌いな母がありえない。
「嘘言ってどうすんの、このやつれた姿が全てを物語っていると思わない?」
「お父さんと喧嘩でもして家を飛び出して来たの?」
「まさか~お父さんを追い出しても私が家を出るなんて事は、ありえないでしょ」
「それもそうだよね」
母は、いつもの定位置である食卓の椅子に座ると、「いや~しんどいね~帰りが思いやられるね」
「どうしたの?近所のコンビニにも車で行く人が」
「健康の為だから仕方ないんだよ、私にもしもの事があったら、お父さんの面倒は誰が見るんだろうって考えたらさ、健康で居なきゃって思ったんだよ」
「へ~やっと目覚めたんだ」
「目覚めたっていうより、医者に歩けって言われたら従うほかないじゃない」
「何処か調子悪いの?」
「腰が痛くて病院へ行ったら、骨密度も低いし、少し太り気味だから歩きなさいって言われてさ」
「歩くのが健康に一番良いらしいよ、ダイエットにもなるしさ」
「そう、それじゃ少し頑張ろうかな、家からここ迄何キロぐらいなんだろうね」
「一・五キロってとこかな、往復で三キロはあるよ」
「えっ?そんなに?往復で三キロも・・・」と何を思ったのか、少し考え込む母。
「お昼、食べて行くよね?できる迄シャワーでも浴びたら?気持ち悪いでしょ」
「うん、汗びっしょりだよ。着替え持って来て良かった」
母がそう言いながら、リュックから着替えを取り出すのを見て、何とも用意の良い事だと関心する。
シャワーを済まし、さっぱりとした様子の母は、余程お腹が空いていたのか、驚くほどの量のパスタを食べると、満足そうに言った。
「お腹もふくれた事だし、そろそろ帰ろうかな」
そして母は、リュクを背負いながら私に言った。
「車で送ってちょうだい」

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